その唇に魔法をかけて、

「……あのさ、明日の夜は時間取れるか? 早番だろ? 検定試験に合格したご褒美に花火大会に連れてってやるよ」

「え……?」

 美貴は目をぱちくりさせて、自分が今何を言われたのか把握するのに時間がかかっていると、花城がほんのり顔を赤らめて言った。

「別に、褒美っていうのは口実だけどな。花火大会にはお前と行けたらなって思って、溜まってた仕事を全部片付けた」

 誘おうと思って勇気をかき集めている途中で、逆に誘われてしまった。まさかの出来事に言葉が出ない。

「花城……さん」

「あぁもう! 行くのか行かないのかはっきりしろって!」

「行きます! 行きます! 是非!」

 いつまでも放けて返事をしない美貴に痺れを切らした花城が唸る。全力でこくこくと頷くと、ほっとしたように花城が笑ってタオルを手にすると「じゃあ、明日な」と言って休憩室を後にした。

(嘘! 信じられない! 花城さんから誘ってもらえるなんて! それに私のシフトも知っててくれてたんだ……)

 再び休憩室でひとりになると、じわじわと表現しがたい喜びが沸いてくる。声にならない声を噛み締めながら、飛び跳ねずにはいられなかった。