その唇に魔法をかけて、

「お前、なんか顔赤いぞ?」

「へ!? べ、別に……」

「そうそう。今朝は誰も冷茶を持ってこなかったな、まぁいいけど」

 おそらく花城は誰がお茶当番なのか知っている。知っていてわざとほんの少し意地悪を言っているのだ。

「すみません、私が当番だったんですけど……つい、忘れてしまって……」

 見え透いた嘘をつくと、花城はそれ以上何も言わず「ふぅん」と鼻を鳴らした。

「あと……手話検定合格したんだって? よかったな、おめでとう」

 今朝の自分の態度を思うと気まずかったのか、花城はバツが悪そうに言った。

「悪かったな、今朝から親父とちょっと揉めて、ってそんなこと言われてもお前には関係ないか」

 花城は苦笑いを浮かべているが、関係ないなんて言われると傷つく。こんなにも自分は想いを募らせているというのに、それが自分だけだと思うと一方通行だ。

 美貴が黙って睫毛を下げていると、花城がコホンと咳払いをした。