「うわー、今日も暑くなりそう」

 手を額にかざしながら目を細めると、照りつける日差しはすでに真夏の熱を放っている。外に出ると、むっとした空気を載せた潮風がゆたっていた。

 黎明館に来た当初はまだ桜が咲いていたというのに、今ではすっかり実をなして、変わりゆく季節を確かに感じた。はじめ戸惑っていた街中も、今ではすっかりどこに何があるか把握して、時折頼まれる買い出しもスムーズにいくようになった。

 仕事面ではまだまだ失敗することもあるが、世間に揉まれながらも美貴は確実に社会人らしく成長していた。