「ご、ごめん! あのさ、私が告白して振られたのはずーっと前だし、響兄ちゃんも仕事で忙しいから、女の人とデートに行ったりしたの一回も見たことないよ?」

 彩乃はそう言いながら「私もいい加減お兄ちゃん離れしないとね」と笑う。

「う、うん。でも大丈夫、好きでいることは自由だと思うから」

 たとえ一方通行でも、想いが届かなくても好きでいることで今は十分だ。そう自分に言い聞かせて彩乃に笑顔を向けるが、うまく笑えてない気がしてならなかった。

(私、好きになってたった一日で失恋しちゃったのかな……? でも、彩乃ちゃんと仲直りできたし……よかった!)

 そう思い直していると、遠くからふたりを呼ぶかえでの声がした。

「あんたたちー! いつまで掃除してるのー? 早く戻って来なさーい!」

 彩乃と視線が合い、互いに自然と笑みがこぼれた。

「美貴、全部話してくれてありがとう。今までのことは本当にごめん、また友達でいてくれる?」

 彩乃がすっと手を差し出す。

「もちろんだよ、こちらこそよろしくね」

 花城のことを考えると切なくなるが、再び結ばれた彩乃との友情を確認するようにその手をぎゅっと握った。