その唇に魔法をかけて、

 クラブにある地下駐車場――。

 花城と美貴の不揃いな足音が、無機質にコンクリートの壁に響いている。

 高級車が並ぶ駐車場に一際目立つ真っ赤なフェラーリが見えると案の定、花城はその運転席へ向かっていた。

「お願い、待って花城さん!」

 小走りに駆け寄ってやっと追いついた。ドアにかける花城の手をとめて乱れる息を整える。

「花城さん、どうしてここに……?」

「さぁな」

 その問いかけに花城は目もくれずそっけなく答える。

 彼は怒っている。そう直感した。自分は黎明館の人たちに心配をかけて勝手なことをした。怒るのも無理はない。

「ご、めん……なさい、私、勝手なことばかりして――」

 震える声を絞りだすが、花城はただ無表情で美貴を見下ろすだけで何も言わない。総支配人である彼を無視して東京に帰ってきてしまったことに対して怒っているのか、橘に絡まれて軽率な行動を取ったことに対して怒っているのか、花城のその表情からは何も読み取ることはできなかった。

 しかし、自分の胸の内を聞いて欲しくて睫毛を下げると美貴は静かに口を開いた。