その唇に魔法をかけて、

「なんだよ? 人の前に立って、言いたいことがあるなら――ひっ!?」

 横目で睨みつける橘をものともせず、花城は無遠慮にむんずと胸ぐらを掴み上げた。そして喰い殺さんばかりの険しく鋭い眼光に近距離で睨まれ、橘はゴクリと喉を鳴らして言葉を呑み込んだ。

「……お前、俺が笑ってるうちにいい加減にしとけ、ケツが青いのは百歩譲って許してやる。けど、三下経営者が我が物顔で人様に迷惑かけるな、これからはちゃんとパパの言うこと聞くって今すぐここで誓え」

「な……なん、で――っ!?」

「誓えと言っている。意味はわかるな? お前に拒否権なんてないってことだ」

 腹の底から湧き出るような花城の低い声に、橘はついに抵抗する術をなくした。

「……し、します! するってば! なんだよその目……あんたやっぱり昔、暴走族やってたって――うぐっ」

 ぐぐっと胸ぐらを締め上げられて橘は慌てて顔色を変えると、両手をあげてギブアップを示す。すると花城はそのまま放るように橘をボサッとソファに押し返した。