その唇に魔法をかけて、

(花城さんって……結構、有名人だったりする?)

 呆然としていると、橘が花城ムードを一掃するように怒鳴った。

「なんなんだよ父さんまで! こいつが最初に割り込んできたんだ! せっかくの雰囲気もぶち壊しだよ! だいたいこのクラブの会員かどうかも怪しいのに、とっとと早くつまみ出してくれないかな?」

「亮治!! やめないか!」

「え……?」

 父親に一喝され、その怒りの矛先がなぜか花城ではなく、自分に向けられていることに橘の目が点になった。

「亮治、お前は本当に何も知らない馬鹿息子だな。ほとほと呆れてしまうよ」

「はぁ? 何が?」

「響也君はな、このカミューラが開店する時に、その資金を合同出資していただいた方の御子息なんだぞ?」

「なっ……そ、そんなこと……知らないね、俺は何も聞いてないし、だからなんなのさ!」

 橘は不愉快を顕にしてソファにふんぞり返るように座り込むと、足を広げてうそぶいた。

「橘さん、いいんです。出資した話は昔のことですし、俺自身はは何もしてませんから」

自分の店を出せた恩は忘れない。そんな義理堅い父とは打って変わって、その息子は真逆のようだ。どこでどう間違えてしまったのか、花城も同情の色を隠せない。

「だが……」

「残念ですけど、息子さんは店を運営していくにはまだまだ勉強不足みたいですね」

 花城は橘の父に視線を送ると、ソファで横柄な態度を取っているその愚息の前に歩み寄った。