その唇に魔法をかけて、

「亮治! なんなんだこの騒ぎは! き、君は……響也君じゃないか?」

 いつの間にか花城と橘の応酬に人だかりができていた。その中をかき分けながら一人の男が割って入る。

「橘さん、ご無沙汰してます」

「あぁ、やっぱり響也君だったな。すまない、なにかうちの息子が迷惑を?」

 花城と懇意に話し出す男は亮治の父、橘和成だった。ざわついた人だかりの中に、自分の息子が見えて慌てて様子を窺いに来たようだ。

「いえ、迷惑をお掛けしていたのはむしろうちの従業員の方です。亮治君にはその介抱して頂いていたようで……」

 花城がにこりと笑うと、周囲で見ていた女性の熱いため息が所々で聞こえてくる。

 ――やだ! あの人、花城響也じゃない!?

 ――ええっ!? あの、黎明館のイケメン総支配人?

 ――うそー! 信じらんない! なんでここにいるの!?