その唇に魔法をかけて、

「もしかして、美貴ちゃん……花城のやつに気があるんじゃないよね?」

「ど、どうしてそうなるんですか? 私はただ――っ!?」

 引き込まれた腕を抑えつけられたかと思うと、身体を捻って覆いかぶさるように橘が身を乗り出してきた。壁ドンのような体勢でソファの後ろにある壁に両手をつかれ、完全に逃げ場を失ってしまった。

「どうしてみんな見て見ぬ振りするのって顔してるね? ここにいる奴らはみんな結局自分のことしか考えてない、花城だって同じだよ」

「花城さんは……そんな人じゃない!」

 彼を侮辱するようなことを言われて、カッと頭に血が上った。橘をぐっと睨みつけるが物ともせず揶揄するように笑った。

「だってさ、もし美貴ちゃんのことが心配だったら仕事なんてしてられないだろ? 花城は美貴ちゃんよりも結局仕事を選んだ」

「そ、それは……」

 そんなふうに言われるとゾクリと背筋が震える。花城はどんなピンチの時も必ず助けてくれた。けれど、今は違う。改めて自分勝手な行動を後悔して絶体絶命を覚悟したその時。

 タンッとすぐ真横で何かが突き刺さるような音が鼓膜に飛び込んできた。