その唇に魔法をかけて、

  その頃、クラブカミューラでは深夜0時を回っているというのに、ホール内にはいまだ大勢の客がほろ酔いになりながら各々の時間を楽しんでいた。

(このパーティって何時までやるんだろう……)

 初めはなかなか気分がのってこなかったが、久しぶりに会う友達と話しているうちに、すっかり昔のようにはしゃぎ飲んでそして楽しんだ。ほっと一息ついて壁際のソファに座ると、これからどうしようかとふと考えた。

 どんなに楽しんでも、やはり黎明館のことや花城のことを考えると、笑顔も力をなくしてしまう。そして浮かれた気持ちも次第に萎えていく。

「美貴ちゃん、どうしたの? 浮かない顔して」

 頭の上からかけられた声に顔をあげると、色鮮やかなカクテルが注がれているグラスを両手に持った橘が、心配そうな面持ちで隣に座ってきた。

「これ、実は美貴ちゃんと一緒に飲もうと思って、特別に用意してたんだ」

 ローテーブルに置かれたシャンパンは、美味しそうな薄づきのピンク色で螺旋状に小さな気泡がくるくると舞っていた。見た目はシャンパンのようだ。