その唇に魔法をかけて、

※ ※ ※

 藤堂はかえでから美貴が東京へ行ってしまったかもしれない。という連絡を受けてからというもの、珍しく仕事にならない一日を過ごした。 

 春も終わりかけ、生温い潮風が藤堂の白い頬を撫でた。独りになりたい時には必ずこの浜辺に来る。穏やかな波が打ち寄せて、心地よい潮騒がささくれだった心を鎮めてくれた。

「はぁ……」

 ため息をつくのも今日で何度目だろう。
 波打ち際を眺めていると、過去の幻影が浮かび上がってきそうな気がした。

 ――お前、砂山の作り方知ってるか?

 ――うん! 知ってる!

 ――ふぅん、じゃあトンネルの作り方は?

 ――え!? トンネル? どうやって作るの?

 ――じゃあ、教えてやる。

 それは遠い日に見た過去の記憶だった。

 藤堂はハッとなり、あの日の光景とまったく自分が同じ場所に立っていることに目を瞠る。