その唇に魔法をかけて、

「私が……私がいけないの、もっとしっかりあの子のこと見てあげてたら! 戻ってこなかったらどうしよう」

 藤堂が無言でかえでを宥めるように背中をさすると、かえでは堪えきれなくなって嗚咽を漏らした。

「かえで姉さん、大丈夫だって、必ず俺が連れ戻してみせる……けど、万が一、あいつが俺を拒否したら……その時は諦めてくれ」

「うぅ……」

 花城は小さく身を屈めたかえでを安心させるように言うと、腕の時計をちらりと見た。 

「今から東京まですっ飛ばしてくる。その間、ここを頼んだぞ」

「響也――」

 そう言い残された藤堂は、何もできない自分を不甲斐なく思いながら、花城の背中を見送った――。