カミューラは花城もよく知っているクラブだった。
創業者の橘和成氏とは父、花城龍也の代から懇意にしていたが、早めの隠居生活をと、まだ経験も浅い未熟な息子の亮治に店を譲り渡してしまった。それからというもの気品のある上質な客層から一変して、高級でありながら俗なクラブへと変貌してしまったのだ。それ以来、東京へ来た際には是非立ち寄ってくれ、と親しいよしみで橘氏に言われていたが花城は東京へ行っても趣向の変ったカミューラに顔を出すこともなくなっていった。
『それに、ちょっと不穏な会話を耳にしてしまいまして、それでお電話しようと思ったんです』
「不穏な会話?」
『今夜、橘氏の息子が来てるんですよ。万が一、彼女が深川さんだったら……お気を付けになったほうがいいですよ。では、社長をお待たせしていますので、失礼します』
そう言うと、牧田は電話を切った。牧田からの忠告の意味、それは花城にも理解できた。橘亮治は遊びグセが激しく、そのうえ女グセも悪い。前に数回会って話したことはあるが、いい印象を持つことはなかった。
「響也、深川さんは……」
美貴の身を案ずるように藤堂が尋ねると、今にも泣きそうなかえでが続いて言った。
創業者の橘和成氏とは父、花城龍也の代から懇意にしていたが、早めの隠居生活をと、まだ経験も浅い未熟な息子の亮治に店を譲り渡してしまった。それからというもの気品のある上質な客層から一変して、高級でありながら俗なクラブへと変貌してしまったのだ。それ以来、東京へ来た際には是非立ち寄ってくれ、と親しいよしみで橘氏に言われていたが花城は東京へ行っても趣向の変ったカミューラに顔を出すこともなくなっていった。
『それに、ちょっと不穏な会話を耳にしてしまいまして、それでお電話しようと思ったんです』
「不穏な会話?」
『今夜、橘氏の息子が来てるんですよ。万が一、彼女が深川さんだったら……お気を付けになったほうがいいですよ。では、社長をお待たせしていますので、失礼します』
そう言うと、牧田は電話を切った。牧田からの忠告の意味、それは花城にも理解できた。橘亮治は遊びグセが激しく、そのうえ女グセも悪い。前に数回会って話したことはあるが、いい印象を持つことはなかった。
「響也、深川さんは……」
美貴の身を案ずるように藤堂が尋ねると、今にも泣きそうなかえでが続いて言った。



