その唇に魔法をかけて、

“カミューラ”は、会員制の富豪層向けの高級クラブで、政治家や財界人や芸能人が主な会員で占めている。どんなに財政を築き上げていても、二十歳以上であることは最低限の審査条件だが、美貴はグランドシャルム総支配人を父に持つコネを使ってこのクラブの会員になった。美貴の友人もまたほとんどがこのクラブの会員で、学生時代からよく週末集っては賑わっていた。

(そうだよね、仕事のことなんか忘れて思いっきり遊んじゃおう!)

 黎明館で働き始めてからというもの、カードは奪われ買い物をする場所もなく、美貴にとってその環境の変化は少なからずもストレスになっていた。

 おまけに仕事仲間からは理不尽に辛辣な態度を取られ、ついに爆発して今に至った。少しくらいハメを外したってバチは当たらない、そう思っていた。