「どうしよう」と、呟いてしまったのは、家のトイレの中だった。


遅れて、生理はやってきた。なんだ。良かった。妊娠してなかったんだ。


よくストレスで生理が遅れたり、なんてこともあるとも聞いたし、異動の話が少し自分にプレッシャーを与えていたといえば、嘘じゃないから。


なんとなく、腑に落ちた。


今日の午前中、産婦人科に行く予定だったけど、これで行かなくても妊娠はしていないことがわかる。


広重に、生理がきたって言わないと、と思うのに。スマホに手が伸ばせなかった。


もし妊娠してないって、わかったら、これでさよならになってしまうのだろうか。


きっと、妊娠なんかなかったら、異動を理由に、簡単に私を遠ざけるつもりでいたのだろうと想像ついてしまう。


妊娠していたとしても、うまいこと言って、堕胎をすすめて、別れるつもりだったのかな。


そう考えて、哀しくなって、またベッドに潜り込んだ。


午後に広重からメールが届いた。


[病院、行きましたか?]


[昨日、家で仕事してたら、寝坊しちゃった。来週行くよ]


[え?そんなに伸ばして大丈夫なの?]


[うん。大丈夫。寝不足だから、今日は一日寝てます]と、メールをそこで終わらせたくて、電源を切った。