お盆休みも終わった。ずっと広重といたけど、あっという間だったな。


休みボケしてそう、と、トイレで化粧直しをしていた。ファンデの色があわなくなった気がする。焼けたのかな。


化粧ポーチを閉まって、廊下に出ると、こっちに向かって来る谷くんと会った。


「お疲れ」


「お疲れ様です。遠山さん、なんか少し焼けましたね?」


「え。嘘」


やっぱり?と思って、顔に触れてしまう。


「嘘です。なにしてたんですか?休みは」


「特になにも」


本当は、日帰りで牧場に行ったり、海を見たり、少し遠出をしたりしたけど、言わなかった。


「あれ?花火大会は?」


「あ。花火大会は行ったよ」


そういえば、あの日、谷くんと会わなかったことは救いだった。


「そっか。いいな」


「谷くんも行ったんでしょ?」


「結局、行かなかったんです。彼女、仕事で」


「本当に?」


「いちおう、別の花火大会行く約束はしてるんですけどね」


どうだか、と呟いた。