『……美嘉…先輩…?』
俺の目は美嘉先輩の姿を追うので必死で。
その姿が離れていくのをどうにか止めたいのに。
その後ろ姿に声をかけることさえ出来ないー…
『美嘉、本当に悠斗に何も言わないでいくつもりなんだね……』
何も言わない……
俺は美嘉先輩の手紙を持つ手に力を入れる、そのせいで手紙はクシャという音を出して。
本当にこれでいい?
本当にこんな結果でいい?
こんなんで言い訳ねーじゃん!
手紙なんかで気持ちを伝えてくんなよ!
俺の顔を見て、俺の目を見て、“好き”だって言えよ…
ーーガラッ
勢いよく開けた窓ガラス。
響く音にさえ気がつかない、美嘉先輩。
振り向くことのない、愛しい人。
俺があなたを見ていることにさえ、気付かない美嘉先輩…
『美嘉ーーーーーーーーーーっ!』
ありったけの力を込めて、愛しい人の名前を呼ぶ。
振り向いて。
気付いて。
俺の願いが、俺の叫びが聞こえたのか、先輩はその場で立ち止まる。
『ふざけんなよ!
こんな紙切れ何枚かで終わりかよ!
こんな紙切れなんかいらねーよ…
こんな紙切れなんかいらねーから!
だからちゃんと自分の想いくらい、口で言えよ!』
立ち止まった美嘉先輩が振り向く。
その表情なんて離れた俺には分からないけど。
それでも俺は、あなたが立ち止まってくれるなら。
あなたが振り向いてくれるというのなら。
『俺は!
ふざけたことしか書かない、そんな美嘉先輩のこと、絶対に忘れないから!
簡単に美嘉先輩を忘れない、そう、約束するから!
だから…もう少し、美嘉先輩も、俺を忘れないでください!
俺に美嘉先輩を好きでいさせてください!』
何度も、あなたを好きだと叫ぶから。
何度も、あなたに好きだと伝えるから。

