体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

優は秋川渓谷から世田谷の実家に帰ってまず車を返し、それから家にもどってシャワーを浴び、洋服を着替えて彼女・吉田綾香との待ち合わせ場所に向かった。

綾香おすすめのなんちゃらキュイジーヌの店は渋谷にあるので、必然的に待ち合わせ場所は渋谷で、それも人でごった返す109の入り口を綾香は指定してきた。

夏の、週末の、渋谷の、夜7時すぎ。

人混みが嫌いな優にとって、最悪の環境で綾香を待つ。

面倒だから本当は直接店で待ち合わせしたいのだが、綾香はいつもも店に1人で入るのを嫌い、いつもどこかで待ち合わせてから行くことになっている。

109の壁に寄りかかり、7分たったところで綾香が「お待たせ」と、右手を小さく頬の横で振りながら現れた。

「凄い人だな。週末に渋谷で飯食うって勇気いるよな」

顔をしかめる優に「やだ、おじさんみたいなこと言って」と、笑いながら綾香が腕をからめた。