体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「他人事みたいに言うけど、あんただってもう30でしょ」

「そう。だから私は先のことを考え始めたのに、啓太は先を考えられないって、30歳ゆえに振られたわけよ。だから考えたって仕方ないのよ、つまりは」

啓太との最後の会話を思い出し、またむかっ腹が立ってきた。

4年半の付き合いで刻んだ様々な思い出は、もう必要なくなった今、できれば一気に削除してしまいたい。

楽しかった思い出を、正しく「楽しかった」と認識できるようになるには完全に相手のことが男としてどうでもよくなったときだ。

少しでも好きだったり未練があったりするうちは、恋の思いでは思い出ではなく心の傷だ。

哀しくて腹が立つことばかり。

一緒に行ったカンクンも、京都も沖縄もレストランもバーも都内のホテルも日本で一番おいしいとかいうふれこみのかき氷屋も、すべて思い出した瞬間に胸がクッとする。

「とりあえずバーベキューに行こう。沼田君に独身の男友達ガンガン連れてきてもらってさ」

「女友達ガンガン連れてきたりして」

「許さない。外部の女人は禁止」

「由美ったら30目前にして、心、せまーい」

「これぐらいしないと」

由美はからから笑って、じゃあねと電話を切った。