むかっとしながらも、別れを撤回してほしい。

だって啓太のこと、好きなのだ。

4年半、うまくいってると思っていたのに、ずっと好きだったのに、あんまりだ。

「別に焦らせているつもりもないし、結婚なんて迫ってないよ。それが理由なら別にこのままで、別れなくてもいいんじゃない」

気持ちを落ち着かせようと、濡れたカウンターテーブルをナプキンでぬぐい、カクテルをぐいと飲む。

啓太は少し考えるふりをしてから「ごめん、やっぱり別れる」と言った。

「おれ、まじで先のこととか当分考えられないし、美弥は年上だし、なんかプレッシャーなんだ。なんつーか、自由になりたい」

いつになく真面目な啓太の顔と言葉が美弥の心を鋭く突いた。