体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

ガチャリとバスルームのドアが開く音がして、中から優が顔をのぞかせた。

「タオル、ドアにかけておいたから」

脱衣所で髪と体を拭き、バスタオルを腰に巻いて戻ってきた優は床に脱ぎ捨てたショーツとパンツをはいたが、Tシャツをつかんでにおいをかぎ、「ねえ、俺に貸せるTシャツない? 昨日の居酒屋のにおいが半端ない」と、顔をしかめた。

「男物のTシャツなんて、全部捨てちゃったからなあ」と言いつつも、美弥はクローゼットを探り、奥の方から一応新品のTシャツを優に渡した。

「これしかない」

優がそのTシャツを広げ、胸元に印刷された文字を読み上げる。

「It’s a SOMY.」

昨年のSOMYの社内コンベンションで社員全員に配られた会社の宣材だ。

サイズはざっくりと女性用フリーサイズと男性用フリーサイズの2種類だけ。

その上、美弥の手元には男性用が回ってきた。

「本当にこれしかないの?」

「ない」

「ま、いっか。じゃあ、柏木美弥の会社を宣伝しながら帰るよ」と、優は宣材のTシャツを着て、今度こそ本当に自分の家に帰って行った。