体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「そっか……」
「結婚するわ。生美くん、あなたとね」
「え?」
ぱっと顔を上げ、生美は伏せていた瞳をまた見開いた。

「また会えたら、プロポーズしてくれるのよね?」

生美がまだ何も言えないうちに、「柏木美弥はめでたく義理の妹になるってわけだ」と、優が苦々しい顔で、けれどどこか晴れ晴れしい顔で言った。
生美は端正な顔をくしゃりと崩し、それから薄く涙を浮かべ、美弥を見つめた。

「ずっとずっと、この先ずっと僕と一緒にいてくれるかな?」
「ええ。ずっとクロックムッシュを作ってね」

美弥の目にも涙が浮かんだ。
そして色があるなら虹色の笑みを交わし合うふたりを見ながら優は「チェッ」と、舌打ちではなくはっきり声に出した。

そして「あーあ、やっぱりあの時、別荘から真っ直ぐ帰ればよかった。河津なんかにおまえを迎えに行かなきゃ……」と、恨みがましくブツブツ言った。