体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

春の夜風に生美の髪がサラサラと流れる。

「きれいですね」
「桜?」
「生美君」
「おのろけかしら」
「どうして生美君は私でいいのかしらって、思うんです」

美弥の、のろけとはほど遠い曇った声に彦摩呂は意外そうな顔をする。


「あら、自信がないの?」

生美と同じことを尋ねる。

「まったくありません。見た目も性格も才能も、生美君に見合うほどのもの、なにも持ってませんから。その上、年上だし」

正直に答えると、美弥の憂いを蹴散らすように師岡が「ひゃっひゃっ」と笑ってバカウケした。
彦摩呂を睨む。

「そういう風に、自分を正しく認識できるところじゃない?」
「これぐらい誰でもわかりますよ」

美弥がシビアな声音になると、師匠もまじめな顔になった。