体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

生美の方が勝手に彼女を好きで追い回していると言っていた。
そして優の場合もそうだったのだと言ったときの、彼が綾香に向けた視線は冷ややかで屈辱的だった。

「みんなじゃないだろ。前つきあってた奴からは振られてるし」

優のピンぼけな答えが綾香をさらにいらっとさせた。

「そんな情報、いらないわ。でも、そうよね。彼女を追いかけているのはあなたたち兄弟だけだものね」

どうしてこんな日に、こんな場所で、あの人に会ってしまったのだろう。
また嫌なことをいい、嫌な女になって、優をあきれさせてしまうのに、美弥のことになると溶けたタールのようにねっとりとまっ黒な感情があふれて出てしまう。

綾香はすぐに後悔し、うつむいた。
以前だったら「いい加減にしろよ」と怒りそうな優が、「食事に行こうか」とだけ言って歩き出した。