体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「へえ。自分勝手なこと言うね」
「いいの。感謝してるの」
「感謝?」
「うん。おかげでどこかで期待して、宙ぶらりんに沖田優に向かっていた気持ちの糸を切ってくれたから。あとは忘れるだけだもの」

夏のわずかな時間に恋をして、そして優は去って行った、いや元に戻って行ったのだ。
美弥だけがあの砂浜に取り残されていた気がしていたが、それももうずいぶんと昔のような気がする。

「オッケー!」

場違いに明るい声を発し、生美が嬉しそうな笑顔を見せた。

「オッケーって、何が?」
「美弥さんがまだ憂君を好きでも仕方がない。でも優君は、まだ彼女と付き合っている。そして僕はこのチャンスを逃さない。美弥さん、僕の彼女になってほしい」