体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「すごい――」
「いいでしょ? ここ」

いつの間にかケンさんがそばにいて、「取っておいたよ」と、2人を窓際のテーブルに案内してくれた。
目の前で落下する滝の水音がかすかに聞こえてくる。

「ケンさんは庭園設計士で、グリーンコーディネーター。仕事で知り合ってからの友人で、尊敬する先輩。ここはケンさんが自分で作った趣味の植物園で、僕のとっておきの場所だったのに、最近口コミで有名になってきちゃってさ」

確かに目立たない場所に目立たない作りで建っているにもかかわらず、すでにレストランは満席になろうとしていた。

「少しは流行ってくれないと維持できないからな」

ケンさんは大げさに真面目な顔を作り、「一番高いコースを頼んでくれ」と、生美にメニューを渡した。

「いいよ」
軽く生美が応えると、「お、さすがセレブ」とケンさんがちゃかした。

「じゃあ、プリフィックスのAコース。美弥さん、魚と肉、どっちがいい?」
「魚」と美弥が答えると、「じゃ、2つとも魚で。あとグラスシャンパンとノンアルコールビール」と言って、メニューをケンさんに返した。

「オッケー」と言ってケンさんは去るかと思ったら、ちょうど近くにきた店員に生美のオーダーを伝え、さらに「あと俺にもビール持ってきて」とつけくわえて、生美の隣に座った。

「ちょっと、なんで座っちゃうんですか。それもビールってなに? アルコール飲めないお客の前でオーナーがビールって」
「だからさ、お前の代わりに美弥さんと乾杯してあげようと思って」
「結構です」
「お、久しぶりに会ったのに、俺のこと邪魔にしてる」