体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

車は東名小田原インターチェンジをおりて熱海方面に向かっている。
道路はすいていたし、生美の運転はスムーズだった。

湯河原あたりで海が見えてきた。

優と一緒に過ごして以来の海――美弥はまた優と共に過ごした別荘での時間と、そしてその帰り、御殿場に生美を迎えに行って、3人で東京に戻ってきたときのことを思い出していた。

ぎらぎらと海に降り注いでいた夏の日差しは随分と淡くなり、波に当たってキラキラ反射している。
車の窓越しに海ばかり見ている美弥に「ずいぶんと物思いにふけってるね」と、生美が笑った。

「やだ。ただきれいだなと思っただけよ」
「海見るとさ、気持ちが落ち着くけど、いろんな思い出も甦ってきたりしない?」

意味深な質問に「うん、そうね」とだけ答えた。