体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「それって俺がせんべいだよな」
「ただのたとえだよ。しかしなあ、せんべい食べたらケーキがたべたくなるし、困るよなあ」
「もういいよ、ひとごとだと思って」

勇はイラつく優を横目でちらりと見、「それよりこれからの話し合いの方が心配だな」と、全然心配そうではない感じで言った。

ああ、と答えて優は腕時計を確認する。

約束の2時までにはあと10分。
進む秒針と共に綾香親子がこちらに向かって歩いてくる姿が浮かんだ。

「暗雲が立ち込めてきた気がする」
「そうか、そういう予感はえてして当たるものだ」

話し合いをする前から気持ちが萎えた。

綾香が何をもとめているのかが優には想像できない。
付き合っている彼女と別れるために親同伴で話し合いをしなければならないとは思ってもみなかった。
ついこの間まで恋愛関係にあったとは思えないほど、綾香との間に距離がある。
それはもちろん優のせいなのだが。