体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「なにそれ。説得力ないなあ。優くん、僕に控えめなんて求めないでよ」

だいたいにして弟とか妹は「控え目」とか「遠慮」というものにかけている。
お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから我慢しなさい、などと親に言われたこともなく、代わりに弟なんだから、妹なんだからといつだって大目に見られたあげく、調子に乗って育つのだ。

特に生美の場合には、美しい容姿と相まって、甘え上手で自由奔放。

「確かにお前に遠慮や控えめを要求するのは間違っていた」

優はため息をつきながら認めた。

「で、なんで美弥さんをフルネームで呼ぶの?」

本当の理由を説明するわけにはいかない。

「それはこいつが俺のことを沖田優ってフルで呼ぶから、俺もそうしてるだけだ」
「どうして?」

今度は美弥に質問の矢が飛んでくる。

「なんとなく雰囲気で。苗字の君付けは丁寧すぎで、呼び捨ては乱暴すぎ。下の名前で呼ぶほど親近感もなかったから」

ふうんと頷いてから、生美は「じゃあ、僕たちの方が親密だね」と、おどけたように言う。

優はバックミラー越しに、戸惑いながら生美を見つめる美弥の顔を眺め、やっぱり御殿場なんかに生美を迎えに行かなければよかったと後悔した。