体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

約束?

「もしかして、イタリアンに行くの?」
「行くよ」
「ひとりで?」

綾香と一緒に行くために予約した店なのだから、綾香が行かないのであればキャンセルすると思っていた。
キャンセルしないで一人で行くなんて、と驚くと、「なわけないだろ。やばっ。相当遅刻だ。それじゃ、また」と、最後の「それじゃ、また」は綾香ではなく母に向けて言い、拓未は去って行った。
「じゃ、連絡して」という決まり文句さえも今回は残さずに。

いったい誰と行くのだろう? 美香? 香苗? 
綾香は拓未と仲が良さそうな女を考えてみた。
盆暮れくらいしか会わないのだから、拓未の交友関係を把握しているわけがないのに、とも考えず。

「誰だろう?」
拓未がほかの女と楽しそうに食事をしている姿を想像するとちょっと面白くなかったが、でも別に拓未に仲がいい女がいてもどうってことはないと、すぐに思い直した。
拓未がたとえ自分の代わりに他の女を食事に誘っても、拓未にとっては自分が一番上なのだ、という自信が綾香にはあったのだ。