体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

こうした思いが根底にあるからなのだろう。綾香が付き合う男はだいたい裕福だ。

隣でハンドルを握る拓未の横顔を、綾香は眼だけ動かして見た。

バランスよくまとまった小さな顔は、華奢な体に似合っている。ぎらぎらした男っぽさも粘り気もなく、拓未にはいくつになってもさらさらとした雰囲気がある。

「拓未君でもいいんじゃない? お金持ちだし優しいし、昔からの知り合いだし」

母はよく綾香に言う。

綾香も万が一の場合には拓未でいいか、と思うこともある。
万が一とは、万が一優と別れたとき――ということだ。でも、そんなことには絶対ならない、させない、と綾香は唇の端を軽く噛む。

綾香の頭の中には、もう優と結婚後の構図が出来ている。結婚したら、優の実家が経営するフラワースクールを手伝う。働きに出るのはいやだが、経営者側に立ってたまに手伝うのは気分が良さそうだ。もちろん毎日なんて働かない。週に数日、数時間ほど。花に囲まれ、自分よりも年配の生徒たちから「可愛らしい奥様」として敬われる生活は適度に忙しく、優雅な感じもあって綾香の理想にぴたりとはまる。