体から堕ちる恋――それは、愛か否か、

「うちの別荘」

「別荘? さすが沖田フローリスト、凄いね」

隣で感心する美弥を優が怪訝な顔で見る。

「うちが沖田フローリストだってよく知ってたね」

美弥がびっくりしたような顔で見返した。

「知ってるに決まってるじゃない。子供の時から同じ町内に住んでたんだから。ちなみにうち、いつもお宅で花買ってたから。お得意様だし」

「あ、そういうことか」

「ほかにどういうことがあるわけ?」

「いや、ちょっと花屋が大きくなったし、弟が有名になったもんだからさ……」

「残念だけど、私は小さなお花屋さんの沖田フローリストしか知らない。でもこの前、沼田君が沖田優のところは今は手広く事業展開してて金持ちだって教えてくれたけどね。それにしてもお母さん、えらいね」

「えらい?」

凄いとはよく言われるが、えらいといわれたことはない。

「偉いよ。事業を広げるにはアイディアも気力もセンスも体力も必要でしょう。それをすべて備えているなんて、すごくてえらい。この別荘は母のおかげね」

白い別荘に向かって美弥は、「沖田優のお母さ~ん、有難うございます」と叫んだ。

「一応、おやじの力も入ってるんだけど」と、優が父をフォローすると、「そっか、ごめんね。沖田優のお父さんも有難うございま~す」と付け加えた。