そんな私に、湊人は少し困ったような顔をして私の腕を引っ張った。 「購買で何か買って、中庭にでも行きましょう。日陰で涼しいです。」 「……うん。」 湊人は“あの事”以来、余計に私を気にかけてくれている。 嫌には感じないし、迷惑でもない。 友達とは少し違って、恋人には遠くて、服従関係は成立しない。 湊人と私の間に直接的な関係は、ないのだ。 「愛さん。」 けれど湊人は私に敬語で、私のことを“愛さん”と呼ぶし、私は“湊人”と呼び捨てで。 そこには明らかに立場の差があるのだとも思う。