ラブレッスン

声のした方向には一人の男性。




短い髪をワックスでツンツンと立てて、白いシャツに黒のストレートパンツ姿。


腰には太いベルトがしてあってそこに別に巻かさってある小さなポシェッとのようなモノの中には

銀色に輝く鋏が何本か治まっていた。




『もう店も閉まってるからそんなに迷惑じゃないだろ?』




結城歩が砕けた話し方で言葉を返す。





『店先でそんなごねられた姿見たら、ここの店腕が悪いんだって、思われるだろ?』






ジロリと私を一瞥した後にまた結城歩に視線を戻す。




『彼女乗り気じゃないみたいだし、

入らないなら帰ってもいいか?』




そうしてくれると助かるわ。




だって





頼んでもいないのにいきなり美容室に連れて来られて、

『まずはその髪型かえちゃいましょう。』




なんて言われても。




嫌がるのは当然の事でしょう?