パソコンの画面の隅の時計は15:20。定時まで残り3時間半!
よし!
今日は8時までに帰るぞ!
恋する乙女は強い!さぁ、仕事!
グッと自分を鼓舞して、キーボードを打ち始める。
「ずいぶん気合入ってんな」
頭上から降ってきた声に顔を上げると、書類を手に持った八王子さんが立っていた。
「八王子さん…!」
いつの間に……!
パソコン画面に夢中になりすぎて、すぐ後ろに八王子さんが来ていたことに気が付かなかった。
「集中してたところ悪いけど、これ見終わったから」
スッと目の前に差し出されたのは、午前に提出した記事の原稿。
ありがとうございます
と原稿を受け取ると八王子さんは微笑した。
「ノーミス。この調子で頼むな」
短い言葉を告げ、八王子さんは席へと戻っていく。
わ……!
八王子さんに褒められた……!
仕事のほんの1コマのことなのに、すごく嬉しい。
思わず、書類をギュッと抱きしめる。

