それからは終始笑ってばかりだった。
昨日一緒に飲んだばっかりなのに、佐田君の面白い話は尽きない。
おかげで、同じ空間にいる八王子さんのことも考えずに済んだ。
「ほらほら姫川もっと飲みなー」
佐田君がテーブルの真ん中から、烏龍茶のピッチャーを取って私のグラスに注ぐ。
コップ一杯分も入らずに、ピッチャーは空っぽになった。
「やべえ、空じゃん。町田さーんボタン押してくれませんかー!」
佐田君が、呼び出しボタンの近くに座る町田さんに向かって叫ぶ。
「八王子君って物知りだねー!」
「そんなことないですよ」
けど、話が盛り上がっていて、聞こえていないみたい。
自分で行くには、席と壁の間が狭すぎる。
これなら自力で厨房へ行った方が早い気がする。
「佐田君、私代えてもらってくるね」

