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その夜。
大手チェーンの居酒屋の一角。
真っ黒な長テーブルを、部署のメンバー総勢12人で囲む。
「この一か月、毎日毎日遅くまでお疲れ様でした。それでは、皆さんグラスを持って!
企画の採用を祝って……乾杯!!」
部長が高らかにグラスを掲げると、皆が「乾杯ー!」とグラスを合わせる。
「お疲れ様でしたー!」
拍手が沸き起こり、お互いをねぎらうと、それぞれ席につく。
八王子さんは私とは遠い角の席で、さっそく隣の町田さんがお酒を注ぎながら、ニコニコと話しかけている。
多分今日は話せないだろう。
席も遠いし。
諦めて、私はトングを手にサラダを取り分け始める。
「姫川、俺のサラダはトマト入れないでね」
「りょうかい」
片手でお願いポーズをする佐田君に、葉物だけを盛り付けた皿を差し出す。

