怪訝そうに言われて、ドキッとなる。
八王子さんはクスクスと笑いながら
「怒ってないから、そんなにびびってんなよ」と言った。
いつもの無表情でクールな八王子さんからは想像もつかない。
こんな子供っぽく笑ったりするんだな…。
「そろそろ帰らないとな。悪かったな、遅くまで付き合わせて」
八王子さんが腕のシルバーの腕時計を見ながら呟く。
「い、いえ!こちらこそ色々迷惑かけてすみませんでした」
頭を下げると、八王子さんが小さく吐息を漏らすのが聞こえる。
優しげな目をした八王子さんに「じゃあ私はこれで失礼します」とお辞儀して、背を向けた。
「…………っ」
だけど。
歩き出そうとしたときには八王子さんに手を掴まれていて。
八王子さんはそのまま私の前を歩き出す。

