何も言えずに立ち尽くしてると
「言っとくけど、お前に拒否権はないからな」
うぅっ!
ぴしゃりと言われて、もはや反論なんて不可能。
そもそも、私と佐田君が原因をつくってしまったんだし、これは仕事の上司である八王子さんからの命令だ。
YESかNOか、なんて悠長なことは言ってられない。
やるしかないんだ……!
ドクン…ドクン…
うるさい心臓に「覚悟を決めなさい」と言い聞かせて。
ぐっと手を握り、口を開いた。
「……わかりました。やらせていただきます」
八王子さんはクスッと笑うと、私の顎に手をあて自分の方を向かせる。
目が合うと、澄んだ黒の瞳が少し細められた。
「よろしく、婚約者さん」
甘い囁き…
なんて程遠い、冷たい口調。
それでも、ちょっと微笑まれただけでドキドキしてしまう。
私って単純すぎるのかな?

