「な、いいだろ?頼むよ姫川ぁ…」
そんな私にお構いなしに、佐田くんは腕を引こうとする。
普段はチャラチャラしてるくせに、こういうときだけ子犬みたいな顔をするのは反則だと思う。
まるで私が佐田くんを見捨てようとしてるみたいじゃない……
ぐらぐら揺れる私の心に、甘える声でトドメの一撃。
「…お願い」
あぁ、もう。
敵わないなあ…………
「…わかったよ、行こう」
「やった~~!!」
ルンルンと音符マークを漂わせながら、佐田くんは階段を上り始める。
その後ろ姿を見つめ、小さく溜息をつくと、私も後に続いた。
佐田くんのバカ。
なんでそんなに、人を動かすのが上手なのよ。
おかげで私は入社してから振り回されっぱなしだよ…!
狭い階段を上って二階につくと、バーの古風な茶色のドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
外見もお洒落なバーは中の雰囲気も良好だ。
洋風の席が並び、天井にはシャンデリア、棚には外国のお酒のボトル、テーブルにはガラス細工のお花が飾られている。

