夜の街を歩き続けること15分。
繁華街とは違う、上品な雰囲気の漂う通り、その一件のバーの前で八王子さんは立ち止まる。
すると、同じように仕事帰りっぽい男女数人が彼に声をかけ、談笑しながら中に入っていった。
なんだ。
友達と飲むだけじゃん。
特に彼の行動に怪しさは感じられない。
「恋人じゃないのかよ。
やっぱり八王子さんは八王子さんか……」
残念そうに佐田くんが言った。
というか刑事ドラマの世界じゃないのだから、尾行してすごい証拠掴むケースの方が珍しい。
佐田くんはつまらなさそうに、店の前にある小さな黒板を見つめていた。
少し高そうというだけで、特別変わった雰囲気はない、普通のバーだ。
ミモザ、ファジーネーブル、ジントニック…
定番なカクテルの名前がズラリと並ぶ。

