周りにいる誰も気づかない、2人だけの秘密のやりとり。
八王子さんの言葉がうれしくて、優しく笑ってくれるのがうれしくて、自然と私も笑顔になって頷いた。
"どういたしまして"と想いを込めて礼をして、私は席に着いた。
「おはよう佐田君」
「姫川…はよ……」
隣の佐田君が、眠そうに頬づえをついているのもいつも通り。
デスクのノートパソコンのスイッチを押して、カバンからファイルとペンケースを取り出してると、佐田君が目を擦りながら、こちらを見ているのに気づいた。
「佐田君……?」
「あ…いや……いつもの姫川だなって」
え……?
言っている意味がわからなくてキョトンとしていると、佐田君は「なんでもねーよ」とぶっきらぼうに言って、パソコンのほうを向いた。
その頬は赤くて、少しだけ照れくさそうな表情。それを隠すかのようにマウスを動かしている。
佐田君……。
きっと私のこと心配してくれてたんだろうなと思った。八王子さんのことで落ち込んでたとき、佐田君は気づいてくれていたから。
ありがとう佐田君……。
心の中でたくさんお礼を言って、私も仕事に取り掛かった。

