髪をアップにして、いつもよりも濃い化粧。それでもすぐに美香だとわかった。
いや、姿を見る前から予感していたのかもしれない……。
たった今殴られたであろう口の端から血を流して、怯えた目で男を見上げている。
美香……!
「くそっ……!」
ビニール袋を投げ捨て、夢中で美香に走り寄る。地面にしゃがみこんで肩を掴んだ。
「美香!」
「咲…人……」
傷口を手で押さえながら、震える声で俺を呼んだ。美香は泣いていた。
その表情を見てひどく後悔したんだ。どうして今まで何もできなかったんだろう。
こんな怪我する前に、どうして助けてやれなかったんだろうって。
でも今はそんなこと言ってる場合じゃない。
「立てるか……?」
俺の問いに美香は頷くと、俺の手を掴みながらゆっくり立ち上がる。俺はその手をギュッと握る。
「走るぞ!」

