「……楽…しいよ」
一呼吸おいて、美香は手のひらをグッと握りながら、震える声で答えた。
「じゃあなんで泣くんだよ!」
「別に泣いてない!」
叫びながら、力づくで俺の腕を振り払おうとしたから、両手首を掴んでガンッと壁に押し付けた。
「泣いてんだろ!嘘つくな!
夢にまでうなされるぐらいに恐がってんのに、なんでそんな男と別れないんだよ!」
「い…たっ!」
ギュッと目をつむり、苦痛に顔を歪める美香。
それを見てハッとなった。美香が今怖がってるのは彼氏じゃない。俺のことだ……。
「悪い……」と、手を離すと美香は床に崩れ落ちた。
うつむいたまま肩を震わせる美香を見ても、俺は立ち尽くして声すらかけることができなかった。
どうしていいかわからなかったんだ……。

