おそるおそる振り返ると、張り詰めた空気の中、対峙する八王子さんと美香さん。
ドアの枠に立つ彼女は、仁王立ちしながら涙を浮かべている。
「嘘つき!
私のこと好きだって言ってくれたのも全部嘘だったんだ」
嘘つき、嘘つきと涙声で繰り返している。
「嘘でも本当でも、おまえを苦しませることには変わりない。
謝るしかできなくてごめん」
何を言われても、八王子さんは静かに謝るだけ。
やがて叫んでいた美香さんの声もなくなり、沈黙が流れる。
一秒、また一秒。
次に聞こえたのは美香さんの低い声だった。
「……もういい」
美香さんは下を向いたままそう言って、顔を上げる。
涙目のまま、持っていた鞄をボスンッと八王子さんに投げつけた。
「咲人のバカ、もう知らない!」

