「……っう」
掴んだ手が離れ、ガンッと壁に手をついたような音がする。
苦しそうな息遣いだけが、狭い玄関に響いていた。
無理して追いかけてきてくれたのに。
それでも、振り返るわけにはいかない。
「ごめんなさい……」
だって、こんな顔見せられない。
泣いちゃダメってわかっていても、涙が止まらない。
迷惑かけちゃう。見せられないよ、こんな顔……。
立ち尽くしたままうつむいていると、キィィと扉の金属音が聞こえた。
「咲人……」
美香さんの声のトーンは低く、そして震えていた。
「ねぇ、咲人。どうして姫川ちゃんなの?私じゃダメなの……?」
「美香……。俺はもうお前をそういう風に見れない、ごめん」

