美香さんは八王子さんの恋人なの?
でも、八王子さんは美香さんの前で私を婚約者と言っていたし……。
一つだけわかるのは、私が居ていい場所じゃない。
それ以上に……。
私がここにいることに堪えられない。
「八王子さん、私帰ります」
「待て…姫川」
「すみません、失礼します」
八王子さんの制止も無視して立ち上がり、部屋の廊下を歩いてく。
行かなきゃ。
早く行かなきゃ、帰らなきゃ。
一秒でも早く立ち去ろうと、かかとを踏む勢いで靴を履き、ドアノブに手をかける。
だってそうでしょ?
ここにいたらー…
私はあなたの前で泣いてしまうから……。
「悠里!」
家を出ようとした瞬間、グイと後ろから手を引かれた。
体が玄関に戻されて、そのまま扉が閉じられる。
「待ってくれ、悠里」
声に心臓がドクンと鳴るけど、振り返ることができない。

