八王子さんの靴の隣に靴をそろえ家に上がる。扉を開けると、八王子さんは、部屋着で頭を押さえながらベッドに座っていた。
「姫川…すまないな」
いつのより低い声で言って顔を上げると、顔色が思ったよりずっと悪く、瞳は潤んでいた。
「書類…今書くから」
立ち上がろうとした八王子さんの体がグラッとなって、慌てて駆け寄って、腕を支えた。
「大丈夫ですか!?無理しないでください」
「……わる、い」
ゆっくりと八王子さんをカーペットに座らせる。
パーカーを着ているのに、それでも私が掴んだ腕に体温が伝わってくる。
熱……高いんだ。
黒いテーブルに書類とペン、朱肉を並べ、座っている八王子さんの肩を支えた。
書類を書くのもやっと状態……。
「八王子さん……」
心配でいてもたってられない気持ちで見守っていると。書類を書き終え、ボールペンをカチッと閉め、八王子さんが顔を上げた。

