アフター7の婚約者サマ!?


ドキドキしながらインターホンに手を伸ばし、ピンポーンと鳴らした。

『はい……』

スピーカー越しの声でも、具合が悪そうなのが伝わってくる。


「姫川です」

『鍵開けて、入って』


そう言って、彼の声はプツッと途絶えた。

わかってはいたことだけど、いざ目の前まで来るとドキドキする……。

おそるおそるカードキーを差し込むと、ドアノブ横に緑色のランプがつく。震える手を伸ばし、ガチャッと開けた。

その瞬間、八王子さんの香りが鼻を掠める。

玄関には八王子さんが会社で履いている黒靴に、おしゃれなスニーカーが並べられており。サイドには白い下駄箱。その上の籠にブランドのキーケース。

その奥のドアのガラス部分から、明かりが漏れている。

男の人の部屋に入るのなんて、いつ以来だろう。とりあえず勤めてからは一度もないかもしれない。


「お邪魔します」