「姫川……」
横で佐田くんが名前を呼んだ次には。
佐田君は私の横をすり抜け、八王子さんに向かって廊下を猛ダッシュしていた。
「待てよ!!」
八王子さんの肩を掴み、声を張り上げた。フロアにいたOLやビジネスマン達が一斉に二人のほうを見る。
「佐田、何大声出してる。今は仕事中だって言ってる……」
「仕事中?おまえだって部下の姫川のこと泣かしてるじゃねえか!」
「………」
ふいに、こちらを見た八王子さんと私の視線が絡まった。
「……っ!」
うそ……!
予想外のことに、溢れそうになっていた涙を必死に堪えるけど、すでに涙は頬を伝っていた。
「姫川……」
「何驚いてるんだよ!アンタが泣かせたんだろ!?」
「……っ」
荒々しく叫びながら、佐田君が八王子さんの胸ぐらを引っ張った。

